一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
真っ黒の肩までの髪は、綺麗に切りそろえられており、上品そうなベージュのワンピース姿の鏡花さんは、ギュッと自分の膝の上で手を組んでいた。
とても楽しそうな話をしに来たわけではないことは一目瞭然だ。
給湯室に向かい、お茶を入れているとすぐに幸田さんはやって来る。
「ねえ、あの人って専務の長馴染みでしょ?」
さすが情報通だと思い、驚いて私は幸田さんを見た。
「よく知ってるね」
「だって、前いた更科さんの妹でしょ? たまに更科さんがはなしていたから」
姉の薫子さんは以前秘書課に在籍をしていたが、今はあっさりと結婚し海外へ行ってしまっている。
「全く真逆で、大人しくて物静かだって」
その言葉に、私は心の中で納得した。
私のイメージの中では薫子さんのようなお嬢様気質な人を想像していたが、その真逆のとても清楚で可憐な感じの人だった。
「そうなんだ」
そう言った私に、幸田さんは私の近くに寄ると、周りを見渡した。
「ねえ、でもそんな人がどうして来てるの? やっぱり専務と?」
この状況ならきっと誰もがそう思うだろう。
自分の事を話すわけにもいかず、曖昧に言葉を濁した。
「あーあ、とうとう専務も結婚とかするのかな。社内一の有望株なのに。残念がる女子社員だらけだわ」
かなり残念そうに幸田さんは言うと、給湯室を後にした。
私は沸いたお湯を急須に注ぎ、ゆっくりとお茶を入れそれを持って部屋へと戻る。