一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
幸田さんの言ったようなことはないと信じている。
しかし、だとすれば鏡花さんは何をしにきたのだろう?
そんな疑問を持ちつつ、鏡花さんにお茶を出すと、伏し目がちにお礼を言われた。
何かを話す? そうは思うも話しかける糸口が見つからずにいると、専務室の扉が開いた。
「ただいま……え? 鏡花?」
ソファに座る鏡花さに気づき、真翔さんが驚いたように声を発した。
「お久しぶりね。真翔くん。いきなりごめんなさい」
静かに言ったその言葉は少し揺れていて、緊張や戸惑いそんな風に聞こえた。
「いや、それよりどうしたんだ?」
真翔さんもその空気を感じたのだろう。鏡花さんの前に座わると緊張した面持ちで問いかける。
「あの」
そう言うと、鏡花さんはチラリと視線を私に向けた。
「私は席を外します」
そう言った私に、真翔さんが間髪入れず言葉を発する。
「いい。ここにいて」
その答えに、鏡花さんはビクッと瞳を揺らした。
「やっぱり無理……ごめんなさい。なんでもないの」
それだけを言うと鏡花さんは立ち上がった。