一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「鏡花、お前がこんなところまで来るなんてよっぽどだろ? どうした?」
兄のように問う真翔さんに、鏡花さんは小さく頭を振った。

「なんでもないの。本当に」
視線を伏せたまま、鏡花さんはそう言うと今度こそ出て行こうとした。

「蓮人さんか?」
真翔さんの声に、確実に鏡花さんはビクリと身体を揺らすと動きを止めた。

「やっぱり……」
そう言いながら真翔さんは大きく息を吐くと、鏡花さんを見た。

「鏡花、大丈夫だから言って。蓮人さんに何を言われてきた?」
鏡花さんはしばらく考えるように俯いていたが、ゆっくりと私たちに視線を向けるとため息を付いた。

「真翔君に結婚を迫ってこいって」
「え?」
つい私は言葉を発してしまい、慌てて口をつぐむ。

「ごめんなさい。松永さん。こんなことを聞かせてしまって」
申し訳なさそうに頭を下げた鏡花さんに、私は大丈夫と示すように首を振った。
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