一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
あれ?
女の感とでもいうのだろうか。鏡花さんの雰囲気に私はつい問いかけてしまった。
「鏡花さん、もしかして……」
私のそのセリフに鏡花さんは綺麗な瞳を私に向けた。
「松永さん、本当にご迷惑をおかけして申し訳ありません。お二人の幸せを願ってます」
そう言って鏡花さんは、私たちに深々と頭を下げた。
「鏡花、大丈夫か?」
真翔さんの言葉に、鏡花さんは少しだけ笑みを浮かべた。
「大丈夫。蓮人兄さまには無理だったって伝えます。二人を見ていたら私の入る隙などないって。安心して、私が責任を持って蓮人兄さまが松永さんに近づかないように見張るから」
その言葉に、真翔さんは複雑な表情を浮かべた。
「いい加減に、真翔君と張り合うのやめてもらわないといけないわよね」
鏡花さんは自分に言い聞かすように言うと、静かに目を瞑った。
「今日は急に本当にごめんなさい」
鏡花さんはそう言うと、専務室を後にする。
「大丈夫ですかね? 鏡花さん」
呟くように言った私に、真翔さんも「そうだな」と鏡花さんの後姿を見送った。