一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「必要以上に俺を見ないし、会話も避けてる。前の秘書たちは距離が近すぎたけど、君は俺を嫌っているようにしか思えない」
はっきりと言われた私だったが、まさか嫌いだからですとはいえる訳もない。
もちろん理由を話すことなどできない。
内心狼狽しつつも、私はなんとか言葉を探した。
「あの、専務みたいな人が苦手なだけです。専務だからではなく」
「俺みたいな人……ね」
ドアにもたれての話を聞いていた、専務はしばらく何かを思案するような表情を見せた後、私のデスクまでくると、パソコンを覗き込む。
「後はやっておく。行って?」
行って……。
昔、置いていかれた私が、今は……。
「お疲れ様です」
なんとも言えない気持ちで、私はその言葉を言うと専務室を後にした。