一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
次の日、出社すると専務はすでに誰かと電話をしていた。

スマホを片手で持ちながら、もう一方の手は忙しく資料をめくっていた。

給湯室へとむかい、すっかり覚えた専務の好みのコーヒーを入れる。
『朝はすっきりとしたブラックこれだけは譲れないんだ』そう言って笑った専務を思いだし無意識にため息が出た。

そんなことを覚えてもね……。

静かに部屋へと入ると、ちょうど電話が終わったようで、専務は「おはよう」と柔らかな笑みを浮かべた。

いつもよりセットが甘かったのか、目にかかった髪をかき上げる。
綺麗な瞳がそっと開かれた。
そんな姿に一瞬見惚れてしまい、慌てて私は専務のデスクの上にコーヒーを置いた。

「ありがとう」
そんな私に気づいてなどいないようで、専務はクルリと肩を回したあとコーヒーに手を伸ばした。

「美味い」
それだけの仕草がまた様になっていて、私はドキっとしてしまった自分を叱咤するとすぐに踵を返した。

万が一この人に気を許してしまっては、今までの努力は何だったのだろうか?

そんなことはあってはいけない。そう思いながらすぐにこの場から離れようと、私はドアノブに手を伸ばした。

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