一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「困ってるだろ?」


「副社長!」
そこにはお兄様である副社長が立っていて、私は驚いて声を上げた。

「お前が秘書を誘うのも、断られるのも初めてみたな」
クスクスと笑いながら言う副社長は、なぜかとても楽しそうだった。
「余計なお世話ですよ。副社長」
この会社に入って1カ月以上経つが、副社長と専務が二人だけでいるのを初めて見た。
少し表情を歪ませた専務は、小さくため息をついた。

「松永さんだったかな?」
専務よりクールで厳しい印象の副社長に、私は慌てて頭を下げた。
「はい、よろしくお願いいたします」

「副社長、何の用件ですか? わざわざこんなところまで。呼んで頂ければ伺いましたよ。こちらから」
専務の幾分トゲを含んだその言い方にも、副社長はクスリと肩を揺らしただけだった。
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