一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「いや、個人的な要件だったんだよ」
「え?」
意外な言葉だったようで、専務は少し拍子抜けしたような表情をした。
「さっきも言っていたが、今週末には時間が出来るって言っていただろ? 亜里沙の誕生日パーティーに来て欲しいと思ってな」
いつもきりっとした副社長が、甘い表情で言葉を発したのをみて私は驚いてその様子を見ていた。
「副社長、松永さんもびっくりしてますよ」
そんな副社長に専務が呆れたように言葉を発した。
「ああ、悪いね。松永さん。娘が今月3歳になるんだ」
急に話を振られた私は、驚きつつも「おめでとうございます」と笑顔を向けた。
真由と同じ年。
きっとかわいい盛りだろう。
「家族でお祝いすればいいでしょう?」
不機嫌そうな様子で専務はそう言うと、ため息を付いてパソコンに向かった。
「そんなこと言うなよ。礼華もぜひって」
きっと礼華というのは奥様の名前なのだろう。まだ表情が緩んだままの副社長は専務の方へと近づいていく。
すっかり、隣の部屋に引き上げるタイミングを逃してしまった私は、その場にたたずんでいた。
入社したばかりのときに、次期社長の座を巡っての兄弟の確執とかそんな記事を見たが、そんな様子はなさそうに見えた。