一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
サラリと言ったその言葉に、私は背筋が凍るかと思うほど冷たくなる。

私のお子さん?そう言った?

「そうだけど、松永さんにも予定あるだろ?」
二人がそんな会話をしているのを遠くで聞いていた。

子供がいることを知っている?

冷静に考えれば履歴書も出しているし、知っていてもおかしくはない。
でも、専務や副社長ともあろう人が、そんな一社員の家族構成など興味があるわけないと勝手に思っていた。

当然、私のことを覚えていない以上、子供が自分の子などと一ミリも思わないだろうけど……。

「ご存知だったんですね。だからいつも定時に……」
そう無意識に零れ落ちた私の言葉を拾うように、専務が小さく頷くのが分かった。

「お嬢さん?」
まさか実の父親に性別を聞かれることなど、真由を生んだ時に想像しただろうか?

なぜか私は涙が零れそうになり、ごまかす様に「はい」と返事をすると頷いた。
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