一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
もしかして気づいていない?
覚えていない?私のこと。
確かに今の私は、あの頃の面影はないかもしれない。
あんなたった一夜限りの遊びなど、数が多すぎて覚えていられないのだろうか?
あ然としつつも、私はなんとか言葉を振り絞った。
「あの、私には無理です。補佐的な業務と聞いていました。正規の秘書など務まりません」
そう言った私に、秘書室長が驚いた顔をする。
「松永さん? 君いきなり何をいいだすの?ここは喜ぶところだろ?」
確かに事務員採用から秘書となれば喜ぶべきところなのかもしれない。
しかし、50代半ばだろう、少し髪が薄くなってきている室長には申し訳ないが、この仕事をする訳にはいかない。