一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「さっき、頼れる人はいないって言ったね」
専務の顔は見えないから、どんな表情で話をしているかわからないが、柔らかな優しく響く声に私はさらに涙が零れ落ちる。
「……はい」
それ以上は何も聞かず専務はそっと立ち上がった。
「今日は一晩、入院したほうがいいそうだ」
「そんなわけには……!」
泣いているのを隠すために横を向いていた私だったが、真由を一人になどできる訳もなく専務を見た。
「俺を信用して。責任をもって兄貴の家で面倒をみるから」
そう言いながら、何も言わず専務は私の濡れた頬にそっと指を這わす。
そして優しく涙を拭うと、そっと私の頭を撫でた。
「一人で頑張りすぎだ」
その言葉に、私は自分でもどんな感情でこの涙が流れるのかわからなかった。真由を妊娠し苦しい時も、辛いときも誰の前でも泣かずに頑張ってきた。
しかし、流れる涙を止める術が解らないほど、私はしゃくりあげて泣いていた。
「まいったな」
そう呟くと、専務は私を優しく起こすとそっと抱きしめ、小さい子をあやすように背中を撫でる。
残酷だよ……。
そう思うも、憎いはずのその人の腕は、温かくてなぜかとても安心してしまい、私は体調の悪さも手伝いそのまま、泣きながら眠りに落ちた。