一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「まず、君の体調は?」
早く真由のことを聞きたかった私だが、専務のその言葉に「大丈夫です」と食い気味に答える。

そんな私に、専務はクスリと微笑んだ。

「真由ちゃんなら亜里沙とご飯を食べて一緒にお風呂に入って、寝るときだけママって少しぐずったけど、疲れていたのかすぐ眠ったよ」

「本当にどうお礼をしたらいいか……ありがとうございました」
専務のその言葉にホッと胸をなで下ろすと、頭を下げた。


「どういたしまして」
真っすぐに前を見ながら運転する専務の横顔を私は無言で見つめていた。
やっぱりよく見ると真由と似てる。
いや、真由が似ているのだ。

「なに? そんなに見つめられると照れるよ」
少し困ったように言った専務の言葉に、私は慌てて視線を前に向けると違う話を口にした。

「病院代や服とかあと、真由にかかった費用は請求してください」
「そんなのいいよ。俺のせいのようなものだし」
「でも……」
「でもは受け付けない。もう着くよ」

淡々と柔らかい微笑みのまま専務は言うと、車は閑静な住宅街の一軒の大きな家の前で止まった。




< 54 / 299 >

この作品をシェア

pagetop