一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「そんなに大変だったんですか?」
「ええ。次期後継者争いがあって、結婚もその手段みたいになっていてね。婚約者は現れるは、結婚相手には家柄が必要とか。それはそれは親戚一同いろいろ言ってきてね。私なんて亜里沙を妊娠した時、身を引いて雲隠れしたもの」
すごい話を笑顔で話す礼華さんに、私は唖然として礼華さんを見た。
「それでどうなったんですか?」
「ふふ、悠人さんが次期社長なんてならなくてもいいから、結婚しようって言ってくれて」
そう言って礼華さんは恥ずかしそに言葉止めて、「こんな話ごめんね」と笑った。
羨ましい。それが率直な感想だった。
そこまで愛され、そして愛していたからこそ礼華さんも身を引いたのだろう。
「普通ならあり得ない世界でしょ? でもその時のおかげであの二人は本音でぶつかれるようになったのかもしれない」
「次期後継者争いは?」
私の問いかけを、特に不思議に思う事もなかったようで、礼華さんは言葉を発した。
「まだわからない。かな。でも二人はどっちでもいいって思ってるみたいだけど」
優しい瞳で亜里沙ちゃんたちを見つめていた礼華さんは「話しすぎちゃった。内緒ね」と微笑むと、四人に声をかけた。