一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「今は忙しい時期で、役員の異動などもあり人がおらず、早急に秘書を募集したところでした。なので新しい人を探すにもまた時間もかかります。その人が見つかるまで働いてはもらえませんか? この契約書に逸脱する仕事はしなくても大丈夫なので」
その言葉に、私はグッと唇を噛んだ。
そこまで言われてどう断れと言うのだろう? それに紹介して頂いた社長にも申し訳ないし、すぐに新しい仕事もみつからないだろう。
無職、それだけは避けなければならない。
「わかりました」
私はいつの間にか手をお腹の前で、ギュッと握りしめていたこと気づき慌てて力を緩める。
爪が食い込んでいたのだろう、ピリッと痛みが走って顔を歪めた。
「どうしました?」
その言葉に、今までデスクに座っていたその人が立ち上がるのがわかった。
「なんでもありません!」
私は一歩後ろに下がると、慌てて頭を下げた。
どうせ短い時間でも仕事をしなければいけないのであれば、私の事など二度と思い出してほしくなどない。
私はそう思いながら、なんとか気持ちを落ちつかせることだけに集中した。