一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「え?」
いつもより低く、それでいて少し甘さを含んだその声に、心臓がうるさいぐらいに騒ぎ出す。
ただ、名前を呼ばれただけなのに。
再会してからずっと、関わってはいけない。そう心に決めてきた。
だから、私はこの人にこれ以上深入りをしてはいけない。
そう心が警告をする。
それでなければ、もう一度裏切られるようなことがあれば、私はもう立ち直れない気がした。
でも。
「楽しかったです。ありがとうございました」
これ以外の言葉が思いつかず、私は小さくそう告げると窓の外の流れる景色に視線を向けた。
今日だけ特別な日。
真由とパパの大切な思い出ができた。
私は、そう心に言い聞かせた。
そのまま特に会話をすることなく、車は私の古いマンションの前に止まった。