一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「専務」

『なに？』

「真由は礼華さんがお迎えに行ってくれました。専務のおかげでこうして頼れる存在が出来たんです。だから、もっと大変なときや、必要なときは言ってくれませんか？」

戸惑ったように響く専務の声にも、私は電話だから言えたのかもしれない思いを伝えた。

少しの沈黙のあと、専務は言葉を発した。

『分かった。でも、この間みたいに体調をくずまでは無理はしない。必ず無理なときは相談して』

「はい」
その気遣いに、今度は素直に言葉が零れ落ちる。

『すぐに資料を確認する。少し待って』
その言葉の後、少しの沈黙が流れる。

どうしてこんなに優しい人が……。
つい、そんな思いが溢れ、慌てて私は思考を戻した。
そこに急に聞こえた声に、ビクリと身体を揺らした。

『待たせてごめん。本当に君は有能だな。ありがとう』
「いえ」
いつも通りの凛とした専務の声に、私は専務には見えないだろうが微笑んだ。