一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「今ざっと見たけれど資料は問題ない……。だからもう帰って」
その言葉に私はの言葉を必ず聞くような気がして、思わずクスリと笑い声が漏れる。

『何を笑ってる？』
少し不信そうなその声に、私は笑ったまま言葉を発した。

「本当に専務って」
『なに？』

「いえ。なんでもありません」
『なに？　気になるんだけど』
少し怒ったような拗ねたような声が聞こえ、初めて会ったときは完璧すぎる上司だったが、最近少しだけ素の専務が垣間見える。

優しいですね。私はそう心で呟く。

「本当になんでもありません。きちんと帰ります」
『ならいい』

柔らかな声が聞こえ、私は少し切なさも覚える。
知りたくなかったことだが、これほどまでにただの秘書に気を使うなんてどれほどいい人なのだろう。
専務が人気があるのは、人柄もいいからだと噂で聞いたこ。
それを知れば知るほど、過去の理由がわからない。
もしかしらた双子とか……。別人とか？　そんなわけないか。
そんなくだらないことを考えていると、扉がノックされる音がした。