セレナーデ ~智之

就職して三年目 大学時代の友達に 紹介された女性と 付き合ってみた。

大人しくて 気立ての良い子だったけれど 智之の 心の穴は 埋まらなかった。


半年くらい 付き合った時 彼女の方から 別れを告げられる。
 

「智之 私に会いたいとか 思ったことないでしょう。」

別れの時に 言われた言葉。


智之は はっとしてしまう。


電話も メールも デートも いつも彼女から。

キスをした時も 体を重ねた時も 彼女のセッティングに 智之は乗っただけ。
 

「ごめん。」

と謝る智之を 彼女は 悔し涙を流しながら、
 

「謝らないでよ。嘘でも 別れたくないとか 言えないの。」

と責めた。


でも 智之は 正直ほっとしていた。


彼女と一緒にいても 何か 満たされなくて。


体を重ねても 虚しさだけが 増えていったから。
 

「最低。」

黙ったままの智之に そう言い捨てて 走り去った彼女。



“ 俺は最低だ ” と思いながら でも 解放感は隠せない。



“ もう恋愛はやめよう ”


そんな風に 思ってしまう自分を 智之は やっぱり最低だと思っていた。
 
 


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