セレナーデ ~智之

いくらも待たずに ドアはノックされ 

40代の男性と 若い女性が入って来る。



頭を下げながら 立ち上がる智之達。


入口の近くに 座っていた智之は 後から入って来た女性と 向かい合う。



顔を上げた智之は 『嘘だろう』 と心で呟く。



目の前の女性は 麻有子だったから。
 


子供の頃の面影も 大学生の時に 見かけた面影もある。


絶対に 麻有子だ。

間違いない。


先輩と 名刺交換している間 つい見つめてしまう。

上司に次いで 先輩に 名刺を差し出す麻有子。
 

「高村と申します。」

と確かに言った。


そのまま 流れるように 智之にも名刺を出す。



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