セレナーデ ~智之

事務所に戻って 残務を片付け 帰宅する智之。


いつもと 同じ日常なのに 違って見えるのは 麻有子のせい。


目に映る 全ての色彩が 昨日よりも 鮮やかに感じる。



少し 本屋を覗いてから 家に帰る。


いつも帰宅は 智之が一番早い。
 

母と二人 食事をしながら 世間話しにも 自然と 笑顔がこぼれてしまう。
 


「何か 楽しそうね。良い事でもあったの?」

智之に 問いかける母に 
 

「まあね。千年に一度の奇跡だよ。」

と言葉を濁す。


麻有子と会ったことは、 まだ言わずに。


母も それ以上は聞かない。



機嫌の良い智之を 温かく見つめるだけで。
 



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