セレナーデ ~智之
色々考えて選んだ 横浜の ホテルのレストラン。
美しい夜景に 歓声を上げる麻有子。
窓の外を指さして、
「あっちが ベイブリッジで あれが山下公園。あの辺に 氷川丸があるよ。」
と智之は言いながら 見つめ合った時 麻有子の瞳に 同じ思いを認める。
「何か、昔を思い出すね。」
照れ隠しに 一口水を飲んで 智之が言う。
「私も 同じこと思っていた。智くんに 色々 教えてもらったよね。」
と麻有子は言う。
ずっと一緒にいて もっと色々 教えてあげたかった。
でも、子供だったから。
自分では どうすることも できなかったから。
一番多感で 揺れ動く時期に 傍にいてあげられない 自分が悔しくて。
麻有子より 2年先を歩く智之だから
2年後の 麻有子の苦しみを 取り除いてあげたかった。
それができない空しさが 智之の心に 穴を開けた。
もう離れたくない。
絶対に離さない。