セレナーデ ~智之
「後で ちゃんと プロポーズするつもりだったけど。何かもう 離れるの いやなんだ。麻有ちゃん、結婚しよう。」
智之は 麻有子が 嬉しそうに 驚く顔を想像しながら言った。
でも 麻有子は 寂しそうに俯いて
「私も。私も ずっと 智くんと一緒にいたい。でも 結婚は。私 智くんの家とは 釣り合わないから。」
と言った。
麻有子の 謙虚な言葉に 驚きながら 智之は反省する。
結婚の話しをする前に 両親に会わせて
麻有子の不安を 取り除かなかった自分に。
「麻有ちゃん ごめんね。プロポーズする前に 麻有ちゃんを 家族に紹介するべきだったね。俺 自分に夢中で。思いやりが足りなかったよ。」
麻有子の肩に 手を置いて 智之は言う。
寂しそうに俯いた麻有子は、
「智くんのご両親 絶対 反対するわ。」
と呟いた。
「しないよ。もし反対されても 俺の気持ちは 変わらないし。麻有ちゃんは 俺の運命の人だからね。反対されたら 俺が高村になるから。」
涙を流しながら 智之の言葉を 聞いていた麻有子は
智之の胸に顔を埋めて 号泣した。
肩を震わせ しゃくりあげる麻有子の 背中を撫でながら 智之は言う。
「麻有ちゃんと 離れるときは 死ぬときだと思っているから。何も心配しないで ずっとそばにいて。」
麻有子の髪に 顔を寄せて 智之自身も 少し涙汲みながら。