セレナーデ ~智之
自分と麻有子の 全てを受け継いで 生まれてくる赤ちゃんだから。
愛しい者が 増えていく幸せは 智之に 優しさと温かさを与えた。
年が明けるころから 大きくなり始めたお腹は
桜の季節には かなり目立ってきた。
麻有子は 3月いっぱいで退職して 出産に備える。
赤ちゃんの成長も順調で 体調の良い麻有子は 毎日 退屈していた。
朝 出勤する智之を 駅まで見送ってくれる。
その後は 松濤の実家に行って 母や義姉と 過ごしているようだった。
「見て見て。智くん。可愛いでしょう。」
母達と デパートに行っては 赤ちゃんの物を買って 帰宅した智之に 見せてくれる。
「もう少しだね。無理しちゃ駄目だよ。」
麻有子のお腹を撫でながら 智之は言う。