愛は惜しみなく与う⑤
「なぁ、志木?」
「…はい」
「あたしって記憶喪失なったことある?」
もうこれくらいしか、思いつかへん。
あたしそんな記憶力悪くないもん。
やから…記憶喪失くらいしか考えられへん
「何を…記憶喪失なんて、なったことありませんよ」
…やんな
志木が少し笑った
記憶喪失なってないかーー
なんでこんなに遠いんや。なんで掴めへんにゃろ
「サトルはさ、何がしたいんやろな。あたしが折れればこんなに皆んなを巻き込まずに済むんかな」
「それは違いますよ。杏様が、サトルの思い通りになる必要はありません」
「でもさ?あたしが欲しいってゆうやん。欲しいって何?結婚?監禁したいん?わからんけど…そのためにこんな事してるんやろ?鈴の事…それに薔薇のみんなにも…何でもするやん」
やっぱり、みんなのことが心配
志木を含め、烈火のみんなに、何かあると思うと…あたしはもう立ち直れへん気がする
だからもう
サトルの好きなようにさせたほうがええんなかって。
手に入ったらさ、飽きるやん
飽きたらいらんくならへんかな
もう正解がわからへん