愛は惜しみなく与う⑤
「何してた、じゃなくて、ひとりでナニをしてたんですよ」

「は?」

「ナニを…一人で、ね」

「どーゆうこと?1人で?」


新に詳しく聞こうとしたら、今度こそ怒った泉は、あたしの耳を両手で塞ぐ


「ちょ!」

「ダメだ、聞くな。それでお前はもう喋るな」

喋るなと新にも軽い蹴りをいれて、このストーカー女の子のお話を泉が避けた


耳に覆いかぶさる泉の手のせいで、ほんまに聞こえへん

泉の手にそっと手を重ねると、あ、悪い。そう言って耳から手を離した


「泉が動揺するの珍しいな」

「俺にも思い出したくない過去の一つや二つある」


よっぽどストーカー女が怖かったんやな。

でも…


「あたし、泉のバイク乗るとき、後ろで背中にくっついてたら、ええ匂いやなぁ思って嗅いでた。あたしも、ヤバい?」


なんか、柔軟剤の匂い?香水?なんやろな?


ええ匂いするから気持ちはわかるけど。ってかあたしも嗅いでたし


「ストーカー?」


首を傾げて泉を見てみれば、口がポカンと開いてる。我に返ったのか、目をパチパチさせて、あたしの頭に手を置いた
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