愛は惜しみなく与う⑤
「って、学校入れるん?」

「多分。昔よく入ってたけど、今は入れるかわかんねぇ」

「ほな、入れへんかったら、ただの散歩やん」

「ただの散歩でいいんだよ」


少し前をいく泉は、ペースを緩めてあたしの隣に並んだ


「家でなんかあったか?テレビ電話した時から、少し様子がおかしかった。帰ってきた瞬間も。俺にいえないことか?」



ドキ
テレビ電話か…あたしちょっと変な態度とったかもしれへん。泉は気付くか

でも


鈴のフリしてるなんて、泉には言えへん


あたしのしてる事は、大事にしてくれてる人の気持ちを無視してるから。
言えへんよ


「嫌いな使用人がいて…その人もあたしのこと嫌いで…結構揉めた。気を使いすぎて、しんどかった」


「……そうか。こっち戻ってきて元気出たか?」

「うん!楽しい!」


あんな嫌なことがあったけど、普通に忘れてしまうくらい、みんなは温かい。
相変わらず煩いくて優しくて…


そうか

泉は心配してくれて、あたしをこうやって連れ出してくれたんか

気分転換にって

いま思えば、泉がわざわざ朔のプリント取りに行くことないもんな



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