愛は惜しみなく与う⑤
そんなん出来るわけ無いのに
あたしはもう、逃げ出せへんところまで来てるのに。
恐る恐る泉はあたしの目元にてをやり、涙を拭った
困らせてる
女が泣くのは卑怯やな。泣いたらあかん
わかってたのに。
「約束しよ」
「ん?」
「来年も、一緒にお祭り行こう。旅行も行こう。いっぱい遊ぼう」
……そんなん、出来るか分からへん
嘘ついて約束できるほど、強く無い
けど、約束できひんかもしれへんけど
「うん、遊ぶ。約束」
差し出された小指に自分の指を絡めた
この時のあたしは、この先のことを考えたくなくて、現実逃避していただけ。
でも泉は
本気で思ってた
「杏を東堂なんかに、渡さないから」
それがどういう意味なのか。
泉は何を思って真っ直ぐあたしをみていたのか。不安な気持ちを抱えたまま、希望にすがる日々
宙ぶらりんの状況で諦めきれへん自分の、しつこさに嫌気がさす
ただキュと小指に力を入れた泉は、大丈夫だよ。そうずっと言ってくれた
こんなややこしい女でごめん
情けないほどに、弱くてごめん
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