愛は惜しみなく与う⑤
酷いと言われるかもしれません。
でもいいんですよ。私は杏様のためだけに動きたいから。
たとえそれが、他の人から批判を買う事でも、杏様に嫌われようとも…


あなたを守るためなら、何だってします


「サトルのシナリオとやらを教えてもらいましょうか」


私は杏様が真実に辿り着く前に、先回りしなければいけないのです。
あなたには言えないこともあるのです。

これは私の独断ですが…あなたの心を守りたいから


「そのままですよ。サトルさんは、あの女の全てが欲しいんだ。心と身体も全て。だから、一回壊したんだ」


へらりと笑ってそう言った男
まだ手は出してはいけない。分かってるのに、手が出そうになる。

壊しただって?


「鈴さんの事件で、彼女は壊れたでしょ?でも足りない。サトルさんはもっともっと彼女に絶望を与えて、どうしようもない所まで落ちていく彼女を、救いたいんですよ」


杏様にこんな話聞かせられませんね。どうしてそこまでするのか。
何がサトルを動かすのか…


ただ私は、こんなことを聞いて落ち着いてられるほど大人でもありません。
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