愛は惜しみなく与う⑤
「で、ですが…杏様はすごく綺麗に使われたので、鈴様にそのまま差し上げれます。それに…!!!」
その時あたしは下を向いて唇を噛み締めた
「何言ってるの?鈴ちゃんには、新しいのを与えるわよ。邪魔だからはやく部屋から出て行ってちょうだい」
あの時の冷たい目と、冷たい声
あたしは一生忘れないだろう
あたしが試験のために使った参考書は、みのりさん…志木のお母さんが買ってくれた。
勿論母上から与えてもらえるわけでもなく。ただ頑張ったねって言ってほしくて
志木に相談したら、志木がみのりさんに言ってくれて。
処分?
邪魔?
その瞬間あたしの中ですべて壊れた
その時に大事な気持ちとか、全部消えた
何かを頑張る気持ちや、人に愛されたいと思う気持ちも、誰かのために何かしてあげたいという気持ちも
なにもかも、消え去った
「お姉ちゃんすごいね。1位で合格なんて!しかも講師も就けずに受かったんでしょ?すごいよ」
あたしの周りできゃっきゃと笑う鈴