愛は惜しみなく与う⑤
その言葉は、本当にあたしをすごいと思ってるものではない


「ねぇ、志木が教えてくれたんでしょ?じゃああたしも、明日から勉強始めるから、志木を貸してよ」



お姉ちゃんには必要ないでしょ?



カチンと来た
愛されないのは、あたしが何か悪いことをしたのだと思ってた

でも

ただの理不尽なんだと知った



「志木は…志木はあたしの執事やもん!!」


鈴のことを突き飛ばして自分の部屋に篭った。隣の部屋からは、大泣きする鈴の声

そしてあたしの部屋の前では


母上がヒステリックに怒鳴り散らかす声


このまま母上が部屋に入ってきたら、あたしは叩かれるかもしれへん。
この家を追い出されるかもしれへん。


でもどうしても、堪えきれへんかった


泣き叫ぶ声に怒鳴り声
うるさいうるさい!!!

でも、あたしの部屋には人が入ってこない


布団の中に蹲り


どれくらいだっただろうか


少し顔をだすと、誰かの謝る声がした



『申し訳ございません。申し訳ございません』


何を言われてもただそう言い返すのは


志木だ
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