愛は惜しみなく与う⑤
『ちょっと、行きたいところあるねんけど』

「行きたいところ?」

こんな時に何を言い出すのかと思えば、思ったのとは違った。杏の勘だ


『なんか、何人かチラチラチラチラ、入ってきた入り口の方のコンテナ見てるねん』

「コンテナ、か」


海沿いのコンテナ倉庫がいくつもあるこの場所は、港に向かう道から少し外れて、赤い目立つコンテナの奥にある


入り口の方といえば、その赤いコンテナ


『ちょっと見てきていい?』

「誰か近くにいるか?」

『朔がおるけど、泉の方行こうてしてるで』

「ちょっと朔に変わってくれ」


おっと
杏と電話しながら黒蛇の相手をしていたら、1発腹にもらった。

咄嗟に脚がでて、蹴り飛ばしてしまった。
いてーな


『桜ってやつは居たか?』

「いや、まだだ。それで、杏についててくれ。俺の方はいいから」

『んだよ。杏についてきゃいいの?』

「あぁ。杏の勘は当たるから。俺は岩見を探すから。ちょっと杏の気が済むまで、好きに動かせてやって」

『お前、杏に激甘だな!』


朔の大きな声がして、携帯を耳から離す
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