愛は惜しみなく与う⑤
あたしの部屋の外から聞こえてくるその声に、あたしは泣いた


静かになって部屋に来た志木


「あなたが泣くなんて珍しい」

「ごめん、志木ごめん」

「何故あなたが謝るのです。あなたは何も悪くない」

「違う…あたしのせいで…」

「私はあなたの、執事なんですよ。あなたの為に尽くして何が悪いんですか?あなたの為に行動するのが私の生きがいです」


部屋に入ってきた志木に、しがみついてそのひは、わんわん泣いた



あたしが諦めた日


何もかもいらないと思った日


志木はこの時、同情してたのかもしれへん。恵まれた環境にいるのに、すべてを与えてもらえなかったあたしに。

何をしても見てもらえなかったあたしに…


惨めなあたしに、同情してくれたのかもしれん。


でも、それでもいいから

あたしは志木が一緒にいてくれた事が、何よりも嬉しかった


そしてその日からあたしは自由になった



すべてを手放したら意外と簡単に、現状が受け入れれた。



「杏様!!またそんな作品ばかり買って、一体何をしようというのです!!」
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