愛は惜しみなく与う⑤
「あたしあなたに、嫉妬してたの」

「え?嫉妬?」

「そう。慧くんが…あなたと出会ってから変わったから。あたしは…変えてあげれなかったの」


下を向いて身体をキュッと抱きしめる桜さん。違うねん。
慧は、まだ気づいてなかっただけ。
ずっと慧も、桜さんのこと特別やと思ってた。

あたしがそれを伝えるのは違うから、グッと言葉を飲み込む

今にも泣き出しそうな桜さんをそっと抱きしめる


「ここから出たら、慧と話してください。2人で、いっぱい話して。きっとその時、慧はいつもみたいにカッコよくないかもしれへん。不器用で上手く伝わらへんかもしれへん。でも…
 
慧と向き合ってあげてください」


あたしはここにくる前に、桜さんへの思いを聞いたから。ずっと悩んでいたモヤモヤが晴れたのを知ったから

もう手遅れだと思う

そう言ってた慧


手遅れにさせたくないから。


黙っていた桜さんは、あたしの腕に手を添えた


「慧くんが言ってた通りだ」

「…?」


「すごく優しくて温かい。杏ちゃんに会ったら、桜さんもそう思うよって…慧くんが言ってたの」
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