愛は惜しみなく与う⑤
それはほんの数分前。


杏がいる入り口の方へ、戻ろうとした時。
志木さんが目の前に現れた。
本当に心臓が止まるかと思った

現在の状況を聞かれ、志木さんは、うーんとすこし考えた後に言った


『何か隙があれば、杏様なら逃げてくると思いますよ』


そう言って笑った


『花火打ち上げましょうか』

「え?」

『皆さんで花火できるの楽しみにしていたので、この場で打ち上げてやろうかと用意してから来ました』


な?ぶっ飛んでるだろ?
   

『昔、杏様の誕生日乱闘の時に、花火を打ち上げたんです。杏様ならなんとかしますよ』


そう言って、合図をしてくれとだけ言われ、志木さんは、どこから持ってきたのか、ボートに飛び乗って、また後でと手を振った


本当に打ち上げようとしていたらしく、海沿いに、元からボートも用意していたらしい。
まさかこんな展開になってるとは志木さんも思わなかったようだが、丁度いい。

そう言って、この場所までボートを操縦してきたと言う。


もう、よくわかんねーだろ?普通じゃないんだよ。考えることが

お陰様で、隙を作る手間が省けた


見事、志木さんの作戦は成功し、杏も志木さんがやったと分かったのか、爆笑しながら周りの男を蹴り飛ばしている

本当に


すごいよな


杏は背の低い小さなコンテナによじ登り、花火を打ち上げているであろう場所をみて、指を差して笑っていた


黒蛇の奴らは何が起こったのか分からないまま、地面に伸びている
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