愛は惜しみなく与う⑤
「いけません!一体どうやってなるつもりです!!」

「血の儀式すんねん!!親指切って!」


青ざめた志木があたしの手を握りしめる。その様子を見て笑った。
あまり笑わなくなったけど、自然と笑えるようになった。


でも、何ヶ月も部屋から出ずに過ごした。


ま、お嬢様やからさ?部屋にトイレも風呂も、簡易キッチンもついてる。
出る必要なんてないよな


「なーなー暴走族とかどうよ」

「あなたって人は…そんなに危ないことがしたいですか?」


困った顔の志木
あたしが何を言っても、絶対に切り捨てない。簡単に諦めろとは言わない。
きっと志木は、あたしを見てきてくれてたから。
諦めろなんて言えへんよな


「こういう人たちは、自分の大事な人のことは、裏切らへんから。ファミリーってすごいやん。血が繋がってないのに……自分よりも大事な存在ができるんやで?それってすごく羨ましい」


これがその時のあたしの素直な気持ちやった。

家族の中でさえ居場所がなかったあたしにとっては、とてもハードルが高すぎて、夢みたいな話やけど


そんなファミリーが出来ることを、あたしはすごく素敵なことやと思った
< 26 / 417 >

この作品をシェア

pagetop