愛は惜しみなく与う⑤
鈴は杏様が外で自由にしているのを、うらやましく思うようになりました。

蘭様…杏様と鈴の母親は、杏様に全く興味がないんです。全く


でも、東堂の娘だとバレるのだけは嫌だったのか、杏様に自分の旧姓を名乗るように言いました。

そうするなら、もう好きにしろと。一切東堂の名を口にしないようにと。
そして杏様はその条件を呑んだ。

それが、峰岸杏となったきっかけです。


久しぶりに話しかけられたと思ったら、東堂と名乗るなだなんて…悲しすぎるんですよ。


でも杏様は、自由や!って喜んでましたね。知らない間に…強くなりすぎてしまったんです。心も体も。

私は側に居たのに…その杏様の強さを成長だと思ってしまった。


でもただ、我慢して強がっていただけなのに。


杏様は東堂から外へ出て、沢山仲間もでき、楽しいと…感じるようになりました。だからでしょうかね。


初めて鈴を不憫に思ったのです。


ずっと東堂の中で生きていく鈴を。



だから今まで、外へ私も連れてって欲しいと言う鈴に対して、それはできないと言っていたのに…


それで鈴の気持ちがまぎれるなら…
そう言って何度か、連れ出してあげたんです。
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