愛は惜しみなく与う⑤
妹がそんなボロボロなんて。
思っても見なかった。


「なぁ。妹は…杏のことが嫌いだったのか?」


話を聞いて泣きそうな顔になっている朔。朔も小さい時から色々苦労していた。
兄弟でも、色々あったから。

それを思うと、どうしても自分とも重ねて辛いよな


「俺は……大和が嫌いだったと思う。だけど…何かされたから嫌いなだけで…2人は、殴りあったり、喧嘩したり…直接何かあった訳じゃないんだろ?」

「そうですね。嫌い合ってたようには見えませんでした。お互いに…劣等感を感じている。それだけですね」


それをこじらせたのか…

朔の言った通り、特に杏は、何かされなきゃ人を嫌いになったりしない。

妹を不憫に思ったのは、惨めだとかそんなんじゃなくて、ただ、同じ景色を…見せてあげたかっただけじゃないのかな



「とにかく…鈴があんな不安定だとは思っていませんでした。鈴に接触して、全て吐かせようとしたんですが。さすがに出来る状態ではありません。本当に死なれたら困る」


手がかりを見つけたと思ったのに、妹は話せる状態でもないのか
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