愛は惜しみなく与う⑤

「妹に会わせてください」

「……それはできません」


考えるよりも身体が動いた
自分の焦りと、何もできない不甲斐なさで、何かに当たるしかなかった


「じゃあどうすんだよ!!あんたが時間がないって言ったんだろ!?無理矢理でも…吐かせるしかないだろ!!じゃなきゃ杏は…」


杏はどうなるんだ



「消えてしまう気がする」



志木さんの胸ぐらを無意識に掴みあげていた。志木さんに当たっても意味ないのに


怖くなったんだ


乱れた服を直さずに、志木さんは、今にも泣きそうな声で言った



「杏様を慕う、貴方達だからこそ…それについては教える事はできません」



なんでだよ…

妹にも会わせてもらえない
何か隠してることも教えてもらえない



「俺らはどうしたらいいんだよ。助けたいって思う事しかできねーのかよ!!」



久しぶりだ。この何も出来ずにイライラしてしまう感じは。
杏に出会って…1番初めの頃、差し伸べた手を、取ってもらえなかった時以来だ


なぁ、杏

消えるなんて、言わないよな…



---
< 282 / 417 >

この作品をシェア

pagetop