愛は惜しみなく与う⑤
泉が出て行った。
あんなに怒って取り乱した泉をみるのは、本当に久しぶりだった。

俺は…どうしてあの時…

大和が杏の妹が生きてると言ったときに、もっと問い詰めなかったんだろう


結局俺は自分のことしか考えてなかった


杏を助けてやりたいよ。きっとその気持ちはみんな同じなんだ。
けど、分からないことが多すぎて怖い


泉が出て行ってしまった後のこの部屋は、一言で言えば地獄。

志木さんも黙り込んでしまったし。俺たちは俺たちで妹が生きてるって聞いて動揺してる。


「時間がないって言うけどさ、具体的にどうなんだ?どれくらいなの?」


この地獄のような空気で響が口を開く。


「俺、志木のにいちゃんにも聞いてほしい話があるんだ。嬉しかったこととかさ。俺はこうやって、何かあったら聞いて欲しくなるけど、杏は…俺たちに知られたくないことや聞いて欲しくないことがまだあるってことだよな?」


東堂だとか、妹が殺されたとか…
きっと言いづらかっただろうし、それなりの覚悟をして話した思う。
< 283 / 417 >

この作品をシェア

pagetop