愛は惜しみなく与う⑤
でもそれ以上に、杏が話したくないこと。
そして志木さんが、杏を慕う俺たちのことを思うと、俺たちには話せないと言ったことも…

全く検討がつかない

でも響が言うように、まだ何かあるんだ



「……杏には、あとどれくらいの時間が残ってるの?」


響の言葉は、素直でまっすぐで…みんなが思って不安になっていることを、そのまま聞いてくれた


目の前の志木さんは、目元に手をやり考え込むように下を向いている。

この人もしんどいだろうな
俺たちでこんなんだから


「時間がないと言う言葉は、本当にそのままの意味で。予想にすぎませんが、杏様に残されな時間はあと僅か。9月25日の鈴の誕生日までだと思っています」


は?あと1ヶ月もねーじゃん


「思ってるってなんだよ。あんたの予想か?」

「……はい。思ったよりもスコーピオンが入り込んできています。区切りがあるなら…それまでだと思います」


区切りってなんだよ
杏は…最初は2年あるって言ってたじゃん。

卒業したら東堂を継ぐから、それまでの2年は…俺たちと一緒に楽しんで…一緒に卒業しようって話してたじゃん
< 284 / 417 >

この作品をシェア

pagetop