愛は惜しみなく与う⑤
「あの…すみません。いいですか?」


新が少し申し訳なさそうに切り出した


「どうして妹の誕生日なんです?杏の誕生日は9月19日でしたよね?何かあるなら、普通は杏の誕生日では?
それに…死んだことになってる妹の誕生日に、なにがあると言うのです」


新が言って、気づいた。
ほんとだよ。妹は本当は生きてるけど、死んだことになってるんだろ?
死んだやつの誕生日祝うのか?

いや、祝ったりもするのかもしれないけど…その日に何があるのか


志木さんが言うんだ
私はそう思いますって言ったけど、ずっと近くにいたんだ。志木さんの予想や考えは当たるんだ



死んだはずの妹の誕生日に、何があるんだよ。そう言おうとした時

廊下の外

玄関の扉がガチャガチャと音をたてた


泉が帰ってきたのか、杏のバイトが終わったのか



「お?志木おるやん。あれ?泉の靴ない」


廊下から杏の声が聞こえた

全員がハッとして、そして…切り替えた


切り替えれたのか分からなかったけど。普通に振る舞えたと思う


「暑かったわー」
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