愛は惜しみなく与う⑤

リビングのドアを足で開けて、やっほーと元気よく帰ってきた杏

昨日の抗争があったのも忘れるくらい、そのあとの出来事の方が濃くて…
もはや黒蛇とかまじでどうでもいい


「杏ちゃん、連絡してくれたら迎えに行くのに!」

「えー?別にええよ。昨日の今日でなんかしてくるやつ居らんやろ」


いつもと変わらず、杏は迎えを頼まない。そして部屋をキョロキョロ見渡して言った


「泉は?どこいったん?」


いつも無理矢理にでも迎えに行く泉が、杏のバイト先に行かなかった。
帰ってきてからも居ないことに、少し違和感を覚えたのか、なんかあった?と冷蔵庫の方を向きながら話す


「あ〜家の手伝いだってさ!最近行けてなかったから…ゴトウさんに少し話あるみたいだし」


こういうとき、慧は本当に上手だ。
何も違和感なくサラリと嘘を言える。俺に聞かれてたらテンパって、何かあったことを杏にすぐ知られる

慧に任せよう



「ふーーーん?あっそう。奥の2人の顔みてたら、何もなかったように見えへんけど?」


俺たちに背を向けゴクゴクとお茶を飲み干した後に、振り返った
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