愛は惜しみなく与う⑤
「お前何言ってんの?あの日っていつだよ。俺あの嬢ちゃんに会ったの、2回だけだぞ」

「2回目です。俺たちが片付け手伝った日…」


何言ってんだと変わらぬ様子
どこにも動揺した様子もない。でも、確かなんだ


「飲み物とりに一緒にきてもらったときか?何か話したっけな?お前の話してたと思うけど」

「違う!そんなんじゃない。あの後杏は…おかしかった。何か俺に言おうとしてたけど躊躇って…おかしかったんだ」


どうしてあの時聞いてやれなかったんだろう。朔のことが無事終わったら、俺からもう一度聞いてやらなきゃいけなかったのに。

目の前のハザマさんはため息をついた



「で?何かあったのは俺のせいだって?」

「……そうです。何か関係がある気がして」

「お前…よく俺を疑えたな。あの嬢ちゃんが何か巻き込まれてるってのは、組長からサラッと聞いてたけど…それに俺も関わってるって言いたいのか?」


ドスのきいた声で詰められる
さすがにびびるよ、普通に。でも



「俺があんたに聞いてるんだ。質問に質問で返すなよ」


こっちも半端な覚悟じゃないから
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