愛は惜しみなく与う⑤
「今度は嬢ちゃん連れて一緒に遊びにこい。その時またゆっくりと、嫁さんと話してくれ。本当に…気を付けろよ」
ハザマさんの精一杯の言葉だったと思う
ありがとうございます
そう言って家を出た
話せてよかった
本当にそう思った
蒸し暑い夜道を歩く。このまま杏の家に帰るべきではない気もするが。
携帯を見れば一件の着信と一件のラインが。
電話は志木さん
ラインは杏から
『どこほっつき歩いてんねん!門限つくるぞ』
口元が緩むのが自分でも分かる
志木さんはあの後だと杏に会ってるかもしれない。今電話して、杏がそばにいたら、なんであたしに先に電話せんねん!って怒りそうだな
とりあえず帰ろう
温かい場所へ
門限作られても困るからな
『今から帰る』
そう送るとすぐに既読がつき、返信が
『押忍!』
な?口元ゆるむだろ?
どんな返事だよ
空気を悪くして出て行ったことも謝らないといけないな。
スコーピオンに近づけた気がする
あと少し
限られた時間の中で……できることを。
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