愛は惜しみなく与う⑤

「来賓?どうして杏が来賓なんだ?」

「……東堂の名をこの時、杏様は名乗っていなかったので。蘭様は、身内の席に杏様を置くことはありませんでした」


悔しそうにそう言う志木さん。
どいつもこいつも…本当に最低なやつらばっかりだな

杏を産んでくれたことには感謝するけど、きっと俺は杏の母親のことを、一生好きにはなれない


「この後…鈴を祝うダンスパーティーが開かれて…杏様は誕生日会までは、我慢していたんですけど、居心地の悪さに耐えれなくなり、ダンスパーティーの時に、ドレスの裾を持ち上げて、窓から飛び降りたんですよ」


はぁ
飛び降り癖は、昔からかよ

ここに座ってるって時は、その誕生日会の間の写真だよな。
誰かが撮った。これは意図的に杏を撮ったように思える


「人目につかないホールとは反対のバルコニーの鍵を、誕生日会が始まる前に、杏様が開けに行ったのを知っています。元から途中で抜け出すつもりだったんでしょうけど。

ただ、あの誕生日会で杏様に接触した人は居ません。ずっと…この椅子に座って動かなかったので」


志木さんは写真を見て眉間にシワを寄せた。
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