愛は惜しみなく与う⑤
取り出した袋を逆さまにして、志木さんは何かをその中から出した


それは掌に収まるサイズで



「泉、貴方に渡しておきます。使う時が来るかもしれません」


志木さんに手を添えられて、それは俺の掌に乗った


「これは…」


見たらわかる。何かは分かるけど…でも何の?どこの?



「東堂の敷地、建物へ入るための鍵です」



掌に乗ったのは、3つの鍵
一つのリングに3つの鍵が通っていて、それぞれ違う鍵


「ちょっと、待ってください。東堂の鍵って…」

「1番大きな鍵が、敷地の裏側から入る使用人専用の鍵。そして真ん中の鍵には、それぞれのIDチップが埋められてますので、それをかざせば殆どの家の中の扉は開きます」


「ま、待ってくださいって。どうして鍵なんか?てゆうかまず、一人暮らしの部屋の鍵じゃないんだから…」


そんな簡単に渡しちゃダメだろ
東堂の鍵だろ?信用してくれてるとは言ったけど、無くしたりしたら、俺この世から消されそう…

というか、どうして…



「必要になる時が来る気がするので。私の勘です」


志木さんは珍しくにこりと笑った
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