愛は惜しみなく与う⑤
「ごめん、ありがとう。志木のことやし…大丈夫やな」


弱々しく笑う杏は、寂しさと不安でどうしようもない顔をしていた。

志木さんの馬鹿野郎

杏にこんな顔させるなよ


どうして…


無事を祈ることしかできない。その後何度かけても志木さんに繋がることはなかった



最後の電話は、杏を守ってくれという、必死の願いと


妹の言葉だった



家につき、杏は疲れたと言い眠った

その日は杏の家には、俺と朔と響だけがいる。
2人に…志木さんが妹に刺されたかもしれないという話をするかどうか迷った。


混乱させるだろうし、何もできないのに変わりはないから。
むしろ杏に変な態度をとってしまいそうな2人だからこそ、言うか躊躇った



白瀬から電話


「どうだ?」

『多分ですが…若が言ってたような事件があった場所を見つけました。ただ…血の跡がアスファルトに染み付いているだけで、人はいません。警察も呼びましたけど…』

「何も残ってないのか?」

『携帯とあと…病院のスリッパみたいな…』

「それだ。そこに居た。調べてくれ。何人使ってもいいから」

『ええ、わかりましたよ。また連絡します』
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