愛は惜しみなく与う⑤
「みのりさん…」

「杏ちゃん…部屋に入りな」


部屋に入りみのりさんは、あたしの前に立って、もう一度顔を見てから抱きしめた


「逃げな。今すぐここから。奥様はもう…精神を病みすぎてる」

「…え?」


一言目から驚く話をするみのりさん。

あたしはこれでいいと思ってた
あたしが鈴の振りをして、母上の精神安定剤になれるなら、それでいいと

でも違ったんか?



「最近ね、奥様にあの事件時の記憶が戻ったのか……鈴ちゃんを探せと暴れることが増えたの。志木には言ったんだけど…

急に鈴ちゃんが居なくなったと泣き喚いて…必死になだめると、落ち着いていつも通りになるんだけど」


勝手に大丈夫や思ってたけど。
時折あの時の記憶が蘇るなら…母上は今、すごく情緒不安定

そんな中あたしが金髪で帰ってきたら…


あーなるんか


「杏ちゃん、もういいから。杏ちゃんの気持ちは痛いほどわかった。東堂を守ろうとしてくれてありがとう。でもあんたは……こんなところに縛られてちゃダメだよ」


肩をガシっと掴まれて
みのりさんから視線を外すことができない

違うねん、みのりさん
あたしは、ええ風に言いすぎたんかもしれへん。
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