愛は惜しみなく与う⑤
そんなん最初からせんかったらええやんって言われるかもしれへん。

でもあの時は


あーゆう風にしないと
あたしがもう、生きてられなかった。
苦しかった

鈴のフリをしたら、一気に東堂は明るくなった。


母上が元気な事で、東堂グループ自体が輝く


だから、これでよかったって思った。



今更逃げるなんてできひん




「みのりさん、あたしは…間違えたことをしたんかな」


「杏ちゃん…」


みのりさんを泣かせてしまった。母上よりもお母さんだったみのりさん。

あたしのことを誰よりも考えてくれてるのも分かる。
だからこそ、傷つけたのも分かる



「逃げへんよ。あたしがあたしって知ってくれてる人がいる限り…あたしは消えないから。ずっと覚えてて」


涙を流すみのりさんを部屋の外へ。
一緒にいたらあかんな


「そや…みのりさん」


大事なことを聞き忘れてた



「志木が、おらんねん。連絡取れへんくなった。何か知ってる?」


みのりさんの息子
そしてあたしの大事な家族


「志木なら、大丈夫だよ」
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