愛は惜しみなく与う⑤

だだっ広いホールを抜けて、さっきとは違う反対側の扉から廊下に出て…

そして庭に出て…


あたしは、襖の前に立たされた


突然の和の雰囲気
襖の向こうからは畳の匂い

こんな場所あったんや。
さっきまでのキラキラとは違う場所


「さぁ着物に着替えましょうか」

「き、着物ですか」


まさかの。着物?
着替えるなんて思ってもなかった。お見合いちゃうんやろ?本人きてるん?

そんなことさえあたしは知らされてない。

てか本人きてたら、連絡も急に取れへんくなったし、バレるよな

いや。もうバレてるんか。なんかもう、その辺ハッキリして欲しいよな。


そして久しぶりの母上の着付け


いつぶりやろか


あたしが母上に服を着せてもらったのなんて、七五三の時ちゃうかな

相変わらずの弱々しい腕が、あたしの着付けを開始する。

だけど指先のしなやかさや、佇まいは、あたしが尊敬していた頃の母上のまんまや


「鈴ちゃん、少し痩せた?」


着付け途中、突然母上に、腹を触られた。
びっくり!!痩せた?痩せて無い
 

いや、そうか


腹筋割れてる…
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